Web master’s voice in Japanese 2018/4/29

4月の中・下旬は二十四節気では穀雨と呼ばれる季節です。植物に優しい柔らかい春の雨が降り注ぐ筈の季節ですが、今年は雨が少なく、気温は急上昇、真夏日の地方も出ています。それでも湿度は低く爽やか気候です。

歳時記によれば、穀雨とは百穀を潤し、芽を出させる春の雨と云う意味です。近年は、秋の収穫を台風シーズンの前に済ませるという狙いもあって、5月初旬に田植えを済ませるところが多くなっていますが、かつては五月雨の季節(梅雨)の6月中・下旬に行うのが主流でした。すると、穀雨とは稲の苗作りを始める時期だったのかもしれません。

また、さくらの語源は、稲の霊(さ)の座る(くら)木、つまり穀霊の宿る木であり、4月上旬の桜の開花を合図に、籾の選別と浸種を始めたという説があります。時系列的には、

4月上旬:  桜の開花 籾の選別開始

4月中・下旬:穀雨   苗作りの開始

6月中・下旬:五月雨  田植え

と丁度、辻褄が合うのですが、いかがでしょう。

“さ”は稲の霊を表す言葉で、“さくら”、“さみだれ”の他にも“さおとめ”、“さつき”等の表現があります。

日本は、つい百年ほど前までは農業国であり、米作り大国でした。農業や米作りに根付いた美しい、或いは暮らしに役立つ表現が沢山あって楽しませてくれます。

いずれにせよ、この時期は、花は花水木、ツツジへと移り、更には初夏を思わせる新緑へと季節は急ぎ足で進みます。草木の変化と成長に目を見張りつつ、同時に、その草木の旺盛なエネルギーを吸収しつつ、爽やかな季節を満喫させていただきましょう。