Web master’s voice in Japanese (14) 2018/04/10
米中貿易戦争
米国が500億ドル相当の輸入品に25%の関税をかける計画を発表、これに対して中国が報復処置を発表、米国は直ちに更に追加で1000億ドル相当に高関税をかける用意があると表明して、貿易戦争は現実味を帯びてきています。
トランプ大統領が中国に対する経済制裁に踏み切るという観測は、選挙期間中からありましたが、大統領に就任後一年余りを経て、いよいよ具体的な動きが出てきました。
2017年の米国の貿易赤字は7962億ドル、その内、対中貿易赤字が約半分を占めています。
各国が外貨保有高に神経をとがらせる中で、米国は、コストは只に近いドル紙幣を発行すれば、いわば際限なく輸入を続けられる特殊な国です。巨大な貿易赤字を抱えても何とか凌げます。しかし、これを放置すればやがてはドルの信認が揺らぎ、世界の金融、貿易の基礎を揺るがしかねません。
巨大な貿易赤字を是正して行こうというトランプ政策は正しいと思えます。勿論、過度の赤字是正対策により経済を失速させてはならないし、また、保護される鉄鋼やアルミなどの産業は保護に応える経営改善をなし、国際競争力を回復することが求められます。
そもそも、歴史や文化や社会の仕組みや発展段階の違う国や地方を十把一絡げにして、全ての関税を撤廃して自由貿易を目指すという発想自体が時代遅れではないでしょうか。
各国の利害が一致せずに、世界の自由貿易を目指すWTOは放置され、世界の現実はEUやNAFTA、TPPなどのブロック化やEPAなどの2国間協議が主流になっています。トランプ大統領の施策はこうした流れに、むしろ沿ったものとも言えます。
中国は外国資本を導入し、技術は海外よりの援助ないし無断借用したもので、海外市場向けに汎用品の安値輸出をすることでこの30年急成長を遂げてきました。いわば、海外よりの資本、技術、市場を得て経済発展を遂げてきました。
そうした経緯にもかかわらず、市場経済の原則を踏みにじり、不公正な貿易をしてきたのは中国です。
また一方で、中国の安い労働力の利用と潜在的な巨大市場に惹かれて、不公正を黙認し、利用してきたグループがいます。国際金融資本を中核とするこのグループは毎年、“世界の賢人”を集めてダボス会議を開催しています。昨年の会議では、何と習近平総書記を招き、トランプ大統領の貿易政策を批判させ、あまつさえ、“中国は断固として自由貿易を守る“と云わせています。
このグループは中国のWTO入りを容認し、驚いたことに、IMFに中国元の特別引き出し権を認めさせてもいます。
国家資本主義と云われる特殊な政治経済体制を持ち、世界のルールをいとも簡単に踏みにじる中国に対して、トランプ大統領は、どうやら本気で、米国の安全保障を考慮しつつ、締め付けに入るようです。
貿易戦争と騒がれますが、中国には米国を攻める手立てはありません。苦しくとも対米貿易黒字を縮小する道を選らばざるを得ません。米国のムニューシン財務長官も交渉で解決したいとの意向も表明しています。早晩、交渉によりそうした方向に向かうことと期待できそうです。
同時に日本も、既に始まっているようですが、短期的な利害にとらわれない対中取引のあり方について抜本的な見直し、縮小、撤退の検討が必要なようです。