web master’s voice in Japanese (22) 2018/9 /25

最近、“ダイベストメント”と云う表現が、マスコミなどでよく使われます。“投資撤退”と訳されていますが、“市場”が特定の企業や分野を定めて、投資家にその企業・分野からの撤退を呼び掛ける動きを指しているようです。

このところ、その“ダイベストメント”のターゲットとされているのが、化石燃料関連の事業です。化石燃料は石炭にせよ、石油にせよ、天然ガスにせよ、地中に埋まっている数億年前の生物の死骸です。採掘を続ければ、何時か枯渇することは確実です。したがって、化石燃料の使用を出来る限り抑えようという方向性に関しては、異論をさしはさむ余地はありません。

とはいえ、発展途上国の成長と共に世界のエネルギー需要は増え続け、しかも、原発に対して逆風が吹き荒れる中で、“市場”が後押しする再生可能エネルギーが化石燃料にとって変わることは可能なのでしょうか。

太陽光パネルは周辺の生態に悪影響を及ぼし、山林を切り崩すことで周辺の海が荒廃する環境被害の報告も後を絶ちません。太陽光も、風力も、地熱も環境に対する影響は未知数であり、また、パネルや風車の生産や蓄電池の処分に要するエネルギーも馬鹿になりません。世界のエネルギー需要の8割以上を占めている化石燃料に取って替わる力は、将来はともかくも、少なくとも当分の間は、再生可能エネルギーにないのは明らかです。

近年は、炭酸ガスの放出量の多い石炭がとりわけ悪玉視されています。しかし、中国のように劣悪な設備と技術で大気汚染を続ける発電と、最新の技術で効率よく石炭を利用する設備を十把一絡げにして、ダイベストメントの対象にするのはいかがなものでしょうか。再生可能エネルギーよりも、現時点では、地球環境に優しい石炭の利用技術の開発を阻害することになりかねません。

そもそも“市場”とはどんなものでしょうか。株式や債券、相場商品などの売買が行われているのが“市場”です。この“市場”は国家の政策が悪いと判断すれば、“市場”の混乱によって政策を糺します。“市場”は政治的しがらみや、国益を乗り越えて、あたかも神に近い判断をするかのごとき印象です。

しかし、この“市場”を支配しているのは世界の金融資本です。金もうけ第一主義の金融資本の牙城です。金融資本にとって都合のよい政策を各国の政府に強要しているとも考えられます。

世論の形成に影響力を有するマスコミや有識者の多くは金融資本に与しています。今や、“地球温暖化”や“弱者”等に関しては、逆らい難い世論が形成されてしまっていますが、“市場”の作り出す正義には注意が必要です。地球環境の味方と云う謳い文句の、“化石燃料関連事業からのダイベストメント”の是非も慎重な見極めが必要ではないでしょうか。

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