web master’s voice in Japanese (30) 2019/7/24
米国の台湾政策
米中対決が取りざたされています。貿易戦争との見方は皮相的で、本質的には「チャイナ製造2025」、南シナ海、東シナ海への軍事進出、一帯一路に代表される他国における利権奪取などに象徴される“中国の世界制覇への動き”を封じ込めるのが米国の真の狙いだとの見方が定着してきています。中国封じ込めに関しては、日頃は対立している民主、共和両党の一致した政策であり、米国は、中国共産党の一党独裁が崩壊するまで手を緩めないとの見方も有力になってきています。
この米中対立の動きに並行するように、米国の台湾政策が変化してきています。2018年2月には台湾旅行法が成立して、政府高官が自由に交歓できる体制を作りました。9月には台北に新事務所を開設しましたが、敷地内には軍事施設も内蔵されているとの情報もあります。トランプ大統領は“一つの中国”という中国の主張には、米国は縛られないと公言しています。最新鋭の武器供与も行いました。2019年の6月1日発表の文書では米国国防総省は台湾を国と明記しています。1979年の米中国交開始以来、中国に慮って来た米国の台湾政策が大きく変わろうとしています。
一方、文政権の誕生以来、韓国に対する日米の信頼は急速に低下し、今や、トランプ大統領も韓国は相手にしない姿勢が鮮明になっています。日本も誠に遅まきながら、恐らくは米国からの後押しで、軍事転用も可能な半導体関連の三品目の輸出規制に踏み切り、8月からはホワイト国という韓国に対する輸出優遇措置も取り消す方針です。従来、日米韓の軍事同盟を反共の砦としておりましたが、日米ともに韓国に対しては距離を置く方向に舵を切りました。
入れ替わるように、台湾の重要度が増しています。東シナ海と南シナ海を結ぶ要衝に位置する台湾は中国の太平洋進出を阻止する要石です。地勢上の重要度に加え、台湾には、5G覇権を目指す中国が渇望する先端技術があります。中国への技術流失を防ぐには、台湾の政治・経済の安定が欠かせず、日米台の強固な連携が求められています。
香港の自由への闘争は台湾の政治状況に大きく影響します。米国は台湾政策を変更しました。一方、台湾の蔡英文総統は日本に対して安全保障対話を呼び掛けてきています。
「自由で開かれたインド・太平洋戦略」を標榜する日本も曖昧な態度に終始するのではなくて、覚悟を決める時期が来ています。
田中角栄政権は、日中平和条約の締結を焦り、事前協議では譲歩に譲歩を重ね、あまつさえ、台湾との断交までしてしまいました。台湾とは今一度、信頼し合える強い関係を築き直す努力を、むしろ日本の側から積極的に、すべきでしょう。
東アジアの情勢は大きく動こうとしています。日本の安全保障に直接かかわる問題です。しかし、先の国会でも、また、参議院選挙でも、安全保障も憲法も論点とは成りません。平和ボケ日本もそろそろ目覚めないと、取り返しのつかない事態ともなりかねません。